嗚呼、やんぬる哉。

雲の如く、流れ歩む日々よ。

誰がために鐘はなる

あ、ネタバレ含みます。

ご注意ください。

とは言え、テーマは映画の感想文ではないです。

 

 

朝井リョウさん原作の映画『何者』を観ました。

朝井さんは同じ平成元年生まれ(学年は向こうがひとつ下)ということもあり気になる作家さんでしたが、原作小説『何者』を読んだときは身悶えするような気持ちになりました。

同年代で、同じように就活をして、そこで感じたことを「直木賞作家」がぶつけた作品。

そりゃ、「うわ、これ俺のことか!?」って悶えたくもなるものです。

 

就活が順調にいかないのは何故か。

そんなのは凄く単純で、企業の求めるバリューを自分が提示できていないからに過ぎないんですよね。

「チミはまだ我が社で働けるレベルではないのだよ、うっふふん」と言われているんですよね。

 

「選ばなければ働き口なんていくらでもある」のは事実だけど、とは言え、少しでも魅力的な職場に行きたいのは自然な感情。

同じように、少しでも魅力的な仲間を戦力として加えたい企業の思惑も当然の判断。

この攻防を経て、魅力的な企業が魅力的な学生へ順番に内定を出していく。

魅力的な学生も魅力的な企業へ順番に内定を受諾していく。

 

だから、魅力の少ない学生は辛い。

幾度となく選考に挑んで、内定が出ない。

もちろん、魅力の少ない企業も辛い。

幾度となく選考を行っても、受諾されない。

 

上層と下層で明暗がハッキリと別れる。

これは辛い。

就活って、辛い。

 

 

がーーーーーーーっ!!

しかし!

つかこうへいは言いました。

「人は、幸せになるために生まれてきたんです」

と。

つか亡き今、彼の言葉に救われてきた僕らはそのことを自分の人生で証明せにゃならんのです。

幸せになるということは、僕らの権利であり責任であり義務であります。

このことを、きっちりと言い張らねばなりません。

 

 

演劇人・舞台人でもある三浦大輔監督は、文庫版『何者』の解説も書いておりました。

ですので、原作への理解度はバッチリと言えるでしょう。

演劇的構造を利用した終盤の見せ方は、舞台人である三浦監督ならではです。

 

この「演劇」というキーワード。

主人公の二宮拓人は、引退したものの劇団プラネットで創り手を担当していました。

これは、ただの学生が「何者」かになるには見過ごせないキーワードです。

 

学生は就活生になり、社会人になるために必死で就活戦線に挑みます。

今の日本の就活スタイルには賛否両論ありますが、少なくとも現時点では決められた枠の中で戦うしかありません。

東大生だって、卒業して働いていなければただの穀潰しです。

が、しかし。

そんな枠からはみ出る人もいます。

 

野田秀樹

日本を代表する劇作家であり演出家であり俳優。

彼は、東大中退です。

在学中から演劇界のトップランナーだった彼は東大中退後に「岸田國士戯曲賞」を授賞して、紛れもなく「何者」かになりました。

 

二宮拓人が舞台人「にのみやたくと」だったときに半身とも言える存在だった、烏丸ギンジ。

彼もやはり枠を外れた。

大学を辞めてひとりの表現者として、ズタボロになりながら就活戦線ではない別の戦場で戦い始めた。

五点満点で星1つしか付かなくても、自分の足で立って自分の顔で名前で筆で芝居で、「烏丸ギンジ」として生きている。

 

にのみやたくとも、ひょっとしたら、そちら側にいっていれば「何者」かになれていたのかもしれない。

二宮拓人はそう思っている(感じている(信じている(思い込んでいる(すがっている(ボヤいている(嘯いている(妄想している(………))))))))

 

だから、内定が出ない。

 

 

現役大学生で、1年生や2年生でも、大企業や有力ベンチャーから今すぐ内定が出る人もいるでしょう。

何故ならば、既に「何者」かになっているから。

既に二宮拓人より魅力的な学生として映っているから。

これは決して残酷でもなんでもなくて、僕は、人生トータルでの努力ポイントの違いだと思っています。

 

 ヒトカゲ Lv.5 HP:19

 ゼニガメ Lv.5 HP:20

 フシギダネ Lv.5 HP:21

 

ポケットモンスター赤・緑が発売されたのは、僕が小学校の1年生か2年生の頃でした。

間違いなく朝井リョウさんもプレイしたでしょう。

僕らはポケモン同様に、みんなバラバラなパラメーターを持って生まれ育ちました。

攻撃力が高い、防御力が低い、素早さはまぁまぁ…

ポケモンと違うのは、セーブしてやり直すことができない点ですね。

 

能力が高い、固有の技がある、相性が良い、単純に好きだ…色々な観点で採点され、パーティー(手持ちの戦力、スタメン)が決まる。

その中で勝ち残るには、価値を提示しないといけません。

ジムリーダーのタケシと戦うのに、ピカチュウがいても役に立ちません。

逆にカスミと戦うならエースとして存分に活躍するでしょう。

じゃあ、特に能力が高いわけでもなく得意なタイプがあるわけでもないコラッタは、どうすればパーティーに入れるんでしょうか。

言わずとして知れたボンクラのコイキングは、どうすればパーティーに入れるんでしょうか。

 

大半の就活生は、レベルの低いコラッタでありコイキングです。

ごく一部、本当に稀に、ミュウツーカイリューはいます。

彼らは即戦力、即エースです。

が、コラッタコイキングは必要とされていません。

 

コラッタは、進化してラッタになって、技マシンを使って多彩な技を覚えて、「こいつがいれば何となく便利」という枠を狙えばいいでしょう。

コイキングは周りが必死でフォローすれば進化してギャラドスになって、破壊光線など強力な技を覚えてエースになることができます。

 

ただ、そのタイミングが、大学3年生から4年生の就活シーズンに間に合わないんです。

 

野田秀樹のように枠を外れることもできず、ギャラドスに進化することもできない。

 

だから、内定が出ない。

 

 

だから。

 

もう少し長いスパンで戦えばいい。

 

がんばれ、二宮拓人。

人生は、新卒の就活で終わる訳じゃないんだ。

あと50年も60年もあるんだ。

 

 

最後に、自分の現状を整頓しましょうか。

 

高校時代は演劇部に現を抜かし、ロクに勉強もせず何とか卒業しました。

そして大正大学文学部歴史文化学科卒業という(一般企業的には)役に立ちそうにない学歴を身に付けながら、今度は居酒屋アルバイトに現を抜かし、やっぱりロクに勉強もせず何とか卒業しました。

それから5年8ヶ月。

就活の際には想像もできなかった業界で大企業に入ることになりました。

 

業界での実務経験は4年8ヶ月。

転職を意識してから2年半。

 

もう少しで、ミュウツーカイリューと同じ舞台に立てそうなところまで来ました。

まだ、もう少し必要です。

5年以上かかっても、コラッタはパーティーに入れていません。

が、もう少しです。

もう少しで「何者」かになります。

 

 

更に「人は幸せになるために生まれてきた」ことを証明するには、更に45年とか55年とか必要です。

長くて、しんどくて、挫けそうだけど。

 

でも、これが「人生」っていう戦線に立っているということだから。

だから僕は、今日も身悶えしながら戦っていく。